〔出版社とダイニングと病院と〕
人間関係の構築を
今回の東京行きの真の目的は,私と同じ病に苦しむ方のところを訪れ励ますというところにありました。いつもは講演会で“燃え尽き”てしまう私ですが,主目的を果たすのが講演会の翌日だったので,緊張感を途切れさせることなく行動することができました。
いつも感じていますが,私はやはり,気持で生きている人間なんですね。
しかしせっかくの東京行きですから,可能なイヴェントは取り入れたいと思いまして,講演会翌日にまず私が向かったのは出版社でした。
詳細は省きますが,私が今年8月に出版する予定の著作について,出版社と確認したいことがあったんです。担当の方が2名参加してくださったので,話し合いは効率的に進みました。
私が求めていたのは,人間的なつながり。出版社との関係に於いても,わたしはそのつながりを重視したいタイプの人間なのです。その部分が私にとっては充分でなかった。そこを伝えることができたので,出版社を訪問して良かったです。
入院前の約束を果たす
次に向かったのは,渋谷道玄坂にあるダイニング。ここは最上級のイベリコ豚を扱うお店で,手術のために入院する直前に一度おうかがいしたことのあるところ。その際に頂いた料理があまりにも美味しくて,
「手術が成功したら,必ずまた来ますから!」
と店主と約束していたのでした。
残念なことに私が伺った時に店主はいませんでしたが,イベリコ豚を使ったトンテキランチを頂くことができました。これがまた美味。ランチについてきたカレーと豚汁がまた素晴らしかったです(両方ともイベリコ豚仕様)。
道玄坂の険しさは私から体力を奪いましたが,訪れることができて幸せでした。
実は昨年東京を訪れた際にもこのお店に伺うつもりだったのですが,体調不良のために訪問を断念していたんです。それも相まって,感動の再訪となりました。
いよいよメイン
そしてようやく主目的を果たしに日赤病院へ。元々はその患者さん,私の講演会に来てくださる予定でした。しかしずっと順番を待っていた病院のベッドに空きができたので,入院を優先された(当然ですね)とのことでした。
厳重な手続きを経て病棟へ。病室の近くにある談話コーナーでご対面。事前にメッセージでやり取りしていた時に感じていた印象とは全く違う,穏やかな表情が私の目の前にはありました。
患者さんの罹っているアミロイドーシスは私とは違うタイプのもの。服用している薬も違うし,現れる症状にも異なるところがたくさんあります。
でもそんな差異はどうでもよくて,不治の病に侵されて戸惑っているという点でお互い共感できたように思います。
治療が難しく余命が告げられるような難病に罹ると,まずは病を受け容れられない時期があります。今までの生活が一変し,経済的な不安を抱え,家族をはじめ周囲との関わり方に悩む…。そして少しずつ罹患を受け容れ,できる事を模索していくようになっていきます。
私がこの患者さんとメッセージのやり取りをしていた頃は,まだ病を受け容れられない時期だったのでしょう。それが一定の時間を経た現在は,徐々に心にゆとりが生まれてくる時期を迎えておられるように感じました。それが,穏やかな表情に表れているようでした。
私たちは数時間,語り合いました。現況,今後のこと,症状について,工夫している事などなど,話したい事が次々に湧いてきて,あっという間に時間が経ってしまいました。
彼は私に会えて良かったと言ってくださいました。その笑顔を見ていると,重い脚を引きずりながらも病院を訪問して良かったと思いました。
彼は私の訪問について,
「今日はアミロイドーシス界のスターに会えると楽しみにしていました」
と満面の笑みを湛えながら言いました。難治性の病に苦しむ患者には,こういうユーモアが絶対に必要です。私自身が自分のブログに“なう”をつけたように,精神的な余裕が感じられるようにありたいものです。
有意義だった東京訪問
こうして私のミッションは終わりました。これからも機会を見つけて,全国を巡っていきます。みなさんからの
「今度は○○県に来てください」
というお誘いを,お待ちしています。
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