お好み焼屋さんにて

【現状維持の辛さと安心感と(前編)】

〔闘病を新たな視点で見つめる〕

ホメオスタシスの維持

私たちの身体は,様々な機構で守られています。その大きな一つの概念が〈ホメオスタシス〜恒常性〜の維持〉です。インターネット上の百科事典『Wikipedia』によると,この言葉は以下のように説明されています。

恒常性(こうじょうせい)ないしはホメオスタシス(希: ὅμοιοστάσις、英: homeostasis)とは、生物および鉱物において、その内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである。
恒常性は生物のもつ重要な性質のひとつで生体の内部や外部の環境因子の変化にかかわらず生体の状態が一定に保たれるという性質、あるいはその状態を指す。生物が生物である要件のひとつであるほか、健康を定義する重要な要素でもある。生体恒常性とも言われる。
恒常性の保たれる範囲は体温や血圧、体液の浸透圧や水素イオン指数などをはじめ病原微生物やウイルスといった異物(非自己)の排除、創傷の修復など生体機能全般に及ぶ。
恒常性が保たれるためにはこれらが変化したとき、それを元に戻そうとする作用、すなわち生じた変化を打ち消す向きの変化を生む働きが存在しなければならない。これは、負のフィードバック作用と呼ばれる。この作用を主に司っているのが間脳視床下部であり、その指令の伝達網の役割を自律神経系や内分泌系(ホルモン分泌)が担っている。

この機能は精緻で,例えば体温の維持は摂氏0.1℃単位でコントロールされています。風呂の湯温や外気温などの振れ幅を考えると,この細かさが分かるでしょう。それが崩れた際は生命活動に大きく影響するという例によく掲げられるのは,イネの生育です。平均気温が0.3℃違っただけで,豊作と凶作が分かれると言われているのです。人体の恒常性を維持するということは,それほど重要なことなのです。

黒木の大藤にて
私の脚が痩せ細っているのがよく分かる

コンフォートゾーンという概念

さて,もう一つの概念として,〈コンフォートゾーン〉というものがあります。これは文字通り,快適に感じる場所のことで,私たちの生活の中では,無理をしないで自然に維持できる状況という概念があてはまります。

長らく小学校の教師をしている時に,テストの採点で何度もめぐりあったのは,
《平均点が60点位の児童が90点以上を獲得した場合,その多くが次のテストでは60点台に戻ってしまう》
という出来事でした。せっかく90点以上を取ったのに,それを維持しようとは思わないのかと,昔の私は疑問でした。90点を獲得したことを自信に替えてきっかけとする,そういう青写真を私は描いていたのです。

しかし90点台を獲得した児童は,《コンフォートゾーン》から抜け出してしまったのです。居心地の良い60点台から,なんとも“座りの悪い”90点台の世界に迷い込んでしまった,そういう感じ方をしている児童が多かったのです。

これは例えば体重の減量がうまくいかずにリバウンドしてしまったり,禁煙に何度も失敗したり,離婚を繰り返してしまったりという事例にも当てはまります。コンフォートゾーンを抜け出す(そして,新たな状態をコンフォートゾーンの更新と感じることができるまで維持する)のは,なかなかに大変なことなのです。

それはなぜか。前項でふれたホメオスタシスの維持と関係があるのです。恒常性とコンフォートゾーンの維持は,不可分のものなのです。

発症前の私
体重は100kgをゆうに超えていました

コンフォートゾーンからの脱出を試みて

これを病気に当てはめてみましょう。すると,病気はいつまでも完治しないことになってしまいます。私は生体肝移植術を行った後,なかなか病状が改善しませんでした。当時の私は日々,コンフォートゾーンがいかに強力なものなのかを実感していました。

病状を好転させようと思えば,今までできなかったことができるようになるというイヴェントを繰り返すことになります。ベッドから立ち上がることができないという現況を打破するためには,自力で立ち上がろうとしてみたり,歩行訓練に取り組んでみたりしなければなりません。これは身体に大きな負荷をかけることになります。ベッドに寝ている方が楽なのですから,意識しないとそういう楽な方に流れていってしまうのです。

ベッドから立ち上がり,いよいよ本格的なリハビリへ
理学療法士の助けを借りて立ち上がる

しかし私は歯を食いしばり頑張りました。コンフォートゾーンからの脱却がいかに大変なのかを,事前に自覚していたからです。リハビリにより,自身のコンフォートゾーンを日々更新していくことこそが,退院への道だという風に感じていたからこその頑張りでした。
そして私は成功します。リハビリの実際についてはまた改めて記述したいと思いますが,コンフォートゾーンの更新に成功すると,血管はたくましく太くなり,吐き気は消え,声も力強くなっていきました。ここまで来てようやく退院が現実のものとなったのです。

(後編に続く)

関連記事

  1. 【町並の見学会】

  2. スープカレーを作りました

    【食欲の増加が示していること】

  3. 【なぜ穏やかになったのか】

  4. 【お話会の第一期が終了しました】

  5. 【つながりを求めて難病支援センターに連絡】

  6. 【世界に5人?】

  7. 【我が家のまちがい探し】

  8. 【切れない包丁を目の前にして】

コメント

    • 森田 悦郎
    • 2019年 12月 03日

    本当に、ただ、ただ、努力、そしてそれを続ける精神力に脱帽です。
    大変な時に、いろいろ、ありがとうございました。

      • 4690sensei
      • 2019年 12月 04日

      とんでもありません。いつも温かく見守っていただき感謝しております。

  1. この記事へのトラックバックはありません。