〔忘れられない日〕
私は今日起きたことを一生忘れないだろう。あの,屈辱の数分間は,いつまでもフラッシュバックするに違いない。
アンダーコントロール
私はいつものように,昼食を準備していた。そう,〔リハビリクッキング〕だ。今日は牛焼肉のグレービーソースがけ。主食・主菜・副菜の準備は滞りなく進み,残すはみそ汁の準備だけだった。
みそ汁は朝食で丁寧に作ったので,昼食時にはインスタントみそ汁を出すことにしていた。そこで私はいつものように琺瑯のポットで湯を沸かし,具材などを入れておいた汁椀に湯を注いだ。
湯を注ぎながら,私は
「ポットの蓋は外れやすいから,ポットの傾き加減をきちんとコントロールしよう」
と考えていた。
なのに実際は上手くコントロールできずに,ポットから転げ落ちた蓋が,汁椀の中に落ちてしまったのだ。
その瞬間,私は動揺し,大声をあげてしまった。
「もう,いやだ!」
そしてまた同時に妻も呼んだ。
「助けてください」
一体何事かと隣の部屋から飛んできた妻は,しゃがみ込んで大声で泣きじゃくる私を見てどう思ったろう。
妻は私には何も言わず,汁椀とポットの後始末をしてくれた。
妻が甲斐甲斐しく動いてくれている間,私はずっとしゃがみ込み,掌で顔を覆って泣き続けていた(症状のために涙は出ないのだが…)。情けない,消えてしまいたい…私はそんなことばかりを思っていた。
しかしその時に妻が発した言葉に我に返ることになった。妻は私に対して
「しゃあない,しゃあない。私だってこぼすこともあるしね」
と声をかけてくれたのだ。
その瞬間,私は落ち着きを取り戻した。そうだ,こんなこともある。入院中に感じていた無力感からすれば,こんなことは何でもないことだ,と。
私は大きな声で,こう言った。
「ちきしょー,今日,絶対にブログに書いてやるからな!」
と。
私はできることばかりじゃなくて,こうした失敗も記していこうと思う。そしていつの日か病から完全に訣別した日にそれらを読み返し,最後まで諦めずに勝利できたことを祝うつもりだ。
おはようございます。
このブログの存在、知りませんでした。
大変失礼いたしました。
蓋を落とすのは、皆やりますよね。
次、落とさなくすれば良いだけですよね。
問題は,自分が気をつけようと思っていて,そうしている筈なのに落としてしまったというところなんです。今までの自分なら,そんな失敗はしなかったという思いが強過ぎて動揺してしまったということですね。